2021年2月26日
犬が耳を痒がる!犬の耳ダニ(耳ヒゼンダニ)感染症の原因・症状・治療・予防方法とは?
犬が耳元を痒そうに何度も掻いていたり、耳を床にこすり付けるような仕草をしたりする場合は、耳ダニに感染している可能性が考えられます。今回は、耳ヒゼンダニとも呼ばれる犬の耳ダニに感染しないために、知っておきたい原因・症状・治療・予防方法などを詳しくお伝えしていきます。
犬が悩まされる耳ダニ(耳ヒゼンダニ)とは
犬に多く見られる耳ダニは、耳ヒゼンダニ(学名:Otodectes cynotis)と呼ばれており、学名は「犬の物乞い」を意味しています。耳疥癬(みみかいせん)とも呼ばれ、体長は0.3〜0.5㎜程度の大きさで、人間の肉眼では確認することは難しいほど小さいです。
耳ヒゼンダニは、耳の穴の入り口から鼓膜までの間にある外耳道に寄生し、卵を産み付けます。卵は4日程度で孵化して、幼虫の状態から成虫になるまで、犬の耳の中で、表皮に発生する残渣(耳かすのこと)や組織液を餌にして、生涯を過ごします。卵から成虫になるまでの期間は、3週間程度と言われています。
耳ダニの駆除は、一回では完了しないことが多いです。一回目の駆除の段階で卵の状態だった耳ダニが孵化した後に、再度駆除が必要となります。
犬の耳ヒゼンダニ症の症状とは
犬の耳ヒゼンダニの感染症で見られる症状は、黒い耳垢が大量に出てくる、耳が臭い、耳元を頻繁に掻く、頭を振るのが癖になっている、空気を掻くように足を動かす癖が出るようになる、飼い主が耳のあたりを触るのを嫌がるようになる、など、個体によって様々です。
特に、黒い耳垢が多く発生するようになるのは、犬の耳ヒゼンダニの感染症でよく見られる症状です。この場合、耳掃除を頻繁に行うようになったとしても、耳にいっぱいの黒い耳垢が出てくるのが特徴となります。
犬が耳ダニに感染している状態が長引いてしまうと、耳の中の皮膚が赤く腫れ上がり、炎症を起こして、細菌や酵母(マラセチアなどのカビの一種)が増殖して重症化することがあります。
その他、稀に外耳以外にも、頸部・臀部・尾部などに異所性寄生を起こし、皮膚炎を発症する場合もあるようです。
犬が耳ヒゼンダニ症になる原因
犬が耳ヒゼンダニに感染する原因としては、耳ヒゼンダニにすでに感染されている犬と接触する、犬が多く集まるイベントや施設などで感染する、耳ヒゼンダニにすでに感染している親の犬が子供の犬に感染させる、耳ヒゼンダニの卵や成虫で汚染されているブラシ・ベッド・敷物などを利用する、など、様々な事例が挙げられます。
その他、犬以外にも、猫や、タヌキなどの野生動物から感染する場合もあります。耳ダニに感染した動物と接触した飼い主から感染することもあるので、要注意です。
特に、多頭飼いの場合は、耳ダニに感染した個体を媒介にして、その他の犬にも感染が拡大する恐れがあります。もしも、耳ヒゼンダニ症の症状が見られる個体が一匹現れた時は、念のため、その他の犬も一緒に動物病院に連れていき、診断を受けさせるようにしてください。
犬の耳ヒゼンダニ症の治療方法
犬に耳ヒゼンダニ症の症状が見られた場合の治療は、動物病院で耳の中を洗浄してもらい、耳ダニの殺虫・駆除効果がのあるお薬を投薬してもらう方法が主です。
耳ダニの殺虫・駆除の作用があるお薬には、スポット薬・内服薬・点眼薬などがあり、症状に合わせて、医師が処方を使い分けます。現在では、首の後ろ側に滴下するスポットタイプの駆除薬を用いることがほとんどです。二次感染や、重度の炎症などの症状が起こっている場合は、耳ダニの殺虫・駆除と合わせて治療を実施していきます。
犬の耳ヒゼンダニ症の治療については、一度行っても、卵の状態だった耳ダニが成虫になるまで再度続ける必要があり、完全に耳ダニが見られなくなるまで、根気よく続けなければなりません。耳ダニが卵から成虫になる期間が約3週間であるため、最低でも3週間程度は治療を続けていきましょう。
コリー系の犬種以外には、イベルメクチン注射を行う場合もあります。投与後は犬の体調を観察し、万が一、嘔吐・よだれ・元気消失・食欲不振などの症状が見られた場合は、動物病院に連絡を入れるようにしましょう。
犬の耳ヒゼンダニ症の予防方法
犬が耳ヒゼンダニ症に悩まされないためにも、日頃から愛犬に耳ダニ予防を行うことが重要です。ここでは、犬の耳ダニ予防に効果が期待できる方法をいくつかお伝えしていきます。
・犬の耳の中を、常に清潔な状態に保つ
犬に耳ダニが感染するのを防ぐために、最も基本的な予防方法は、犬の耳の中を常に清潔な状態にキープしておくことです。耳垢が溜まった汚れた耳には、耳ダニが生息しやすいため、注意しましょう。
・耳掃除は、やりすぎに注意する
犬に耳ダニが寄生しないように注意をしようと、犬の耳掃除をあまりにも頻繁に行うのは、かえって逆効果になることがあります。犬の耳の中には、殺菌作用を持つ保護膜があり、耳掃除をやりすぎると、この保護膜を消失させてしまう恐れがあるのです。そのため、犬の耳掃除はやりすぎないように、頻度に気をつけるようにしましょう。
・家の中をしっかりと掃除する
耳ダニに感染した犬が普段から過ごす場所には、耳ダニの卵・幼虫・成虫が散らばっている可能性が高いです。特に、多頭飼いを行っている場合には、一匹の耳ヒゼンダニ症への感染をきっかけに、一緒に飼っている愛犬や、猫などの他の動物にも被害が出る可能性が考えられます。そのため、耳ヒゼンダニ症に感染している犬の過ごす場所の周囲は特に重視して清掃しなければなりません。また、耳ダニは小さくて視認することができないので、どこに潜んでいるかわからないものです。ハウス内や、家全体の掃除も手を抜かずに掃除を行うようにしましょう。
・犬が普段使うものは消毒も忘れずに
犬が普段使うタオル・毛布・マットなどは、洗濯するだけでなく、消毒を行うようにしましょう。消毒方法としては、80度のお湯を用意し、10分間程度、熱水で洗濯する手法が効果的だとされています。
・犬種によっては耳の毛をトリミングすること
トイ・プードル、ミニチュア・シュナウザー、シー・ズーなどの犬種は、耳の穴の入り口に、耳の奥が全く見えなくなるほどの大量の毛が生える場合があります。このようなケースだと、耳の中を観察することができず、耳ダニの繁殖に気づかないこともあるため、定期的に耳の毛をトリミングしてもらったり、動物病院で耳の中の毛を抜いてもらったりして、常に清潔な耳の状態を保つことが大切です。
犬が耳を痒がったり、黒い耳垢が見られたりする場合は、耳ヒゼンダニ症の可能性があるため、獣医師に相談を
今回は、犬が耳ダニに感染しないために、知っておきたい原因・症状・治療・予防方法などを詳しくお伝えしてまいりました。犬が耳を痒がったり、黒い耳垢が見られたりする場合は、耳ダニに感染している可能性があるため、放置せずに獣医師に相談をするようにしましょう。
動物病院では耳ダニの対策や予防方法などを教えてもらえるほか、健康診断や、寄生虫(ノミ・マダニ)の対策・予防なども実施してもらうことができ、総合的な健康管理を行うことが可能です。
耳ダニによる耳ヒゼンダニ症は、犬にとって、とてもつらい症状ですから、少しでも症状が疑われる場合には、まずは最寄りの動物病院で診断を受けてみましょう。
監修者情報
MSDアニマルヘルス株式会社 コンパニオンアニマル事業部 テクニカルサービス
獣医師 釜田 尚彦
東京大学農学部獣医学科卒
運営者情報
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