2020年5月25日
犬のアレルギーとはどんな症状なのか?原因・対策・治療方法とは
人間が犬アレルギーや猫アレルギーなどの動物アレルギーになることは知られていますが、実は、犬も人間と同様に、アレルギーにかかることがあります。今回は、犬のアレルギーとは具体的にどのようなものなのか、原因・対策・治療方法などを詳しくお伝えしていきます。
犬のアレルギーとは
人間にみられる犬アレルギーや猫アレルギーなどの動物アレルギーは、くしゃみ、喘息などの呼吸器系の症状が主です。重症化すると、呼吸困難に陥るケースもあります。
一方、犬のアレルギー症状は、皮膚炎として発症することが多いです。犬のアレルギーの種類は、アトピー性皮膚炎、ノミアレルギー性皮膚炎、食物アレルギーの3つが挙げられます(詳しくは後出)。
初期症状として、身体のかゆみが発生し、犬が患部をひっかくことで症状が悪化します。複数のアレルギーに同時にかかることもあるため、注意が必要となります。
犬がアレルギーになりやすい年齢・体質・犬種とは
アレルギーになりやすい犬の年齢・体質や、犬種などはあるのでしょうか。詳しくみていきましょう。
目次
・犬がアレルギーになりやすい年齢
犬がアレルギーになりやすい年齢は、アトピー性皮膚炎に関しては、一般的に6ヶ月〜3歳あたりまでと言われています。その他のノミアレルギー性皮膚炎や食物アレルギーについては、特に年齢に関係なく発症します。
・アレルギーになりやすい犬の体質
アトピー性皮膚炎などは、遺伝的な素因も考えられるものの、なぜ発症するのか、なりやすい体質があるのかなど、詳しい原因はわかっていません。たとえ、清潔な環境に住み、健康的な食事をとっている犬であっても、何らかの原因によってアレルギー性皮膚炎になることが報告されています。
・アレルギーになりやすい犬種
それぞれのアレルギーの症状ごとに、なりやすい犬種は存在します。
たとえば、アトピー性皮膚炎の場合は、柴犬、レトリーバー種、シー・ズーなどがなりやすい犬種とされています。また、食物アレルギーになりやすい犬種は、コッカー・スパニエル、スプリンガー・スパニエル、ダルメシアン、ボクサー、コリーなどが挙げられます。
その他、アトピー性皮膚炎を罹患する犬は、ノミアレルギー性皮膚炎や食物アレルギーにもなりやすい、といった相関関係の報告も行われています。
犬のアレルギーの種類と診察・治療方法とは
それでは、犬のアレルギーの種類と、それぞれの診察および治療方法にはどのようなものがあるのかを、詳しくお伝えしていきましょう。
①アトピー性皮膚炎
まずは、犬のアレルギーの中でも代表的な、アトピー性皮膚炎についてみていきましょう。
・原因
アトピー性皮膚炎は、環境アレルギーの一種です。空気中に舞う花粉などの季節性のアレルゲンや、カビ、イエダニ、動物の落とす皮膚片や毛断片などの通年性のアレルゲンを原因として、アレルギー反応を起こします。アトピー性皮膚炎については、これらのアレルゲンへの暴露量および遺伝的感受性(genetic susceptibility)の影響で発症します。
・症状
アトピー性皮膚炎の初期症状としては、顔の周辺、足、腹部、下胸部などに生じるかゆみが挙げられます。季節性アレルギー(花粉)と通年性アレルギー(カビ、チリ、ダニ、フケ)によって引き起こされ、症状が進むと、ホットスポットと呼ばれる表皮の部分的感染症や、耳の疾患がみられることがあります。
慢性的なアトピー性皮膚炎に罹患してしまうと、頻繁に掻きむしる癖がついてしまい、脱毛の症状が出ることもあります。4ヶ月〜7歳で発症する場合が多く、特に1〜3歳はよく症状がみられる年齢です。
・診断
アトピー性皮膚炎を特定するために、ノミアレルギー性皮膚炎、食物アレルギー、その他の感染症を引き起こす原因疾患にかかっていないかを確認し、可能性を除外していくことで診断する、除外診断(消去法的診断)を行います。
獣医師が飼い主に対して、症状が発生するまでの詳しい経緯を問診したうえで、正確なアレルゲンの特定を目指します。そして、皮内テストまたは血清(血液)検査を行い、アトピー性皮膚炎であるかどうかを判断します。
・治療方法
アトピー性皮膚炎は生涯続くため、完治させることが難しいアレルギーです。薬物治療を行ったり、薬用シャンプーや薬用コンディショナーなどを使用したり、アレルゲンを除外したりすることにより、痒みの症状を軽減させる対症療法的な治療方法を行います。
その他、アトピー性皮膚炎の原因となるアレルゲンを少量ずつ犬に注射することで、身体を徐々に慣らしていく減感作療法と呼ばれる治療方法もあります。
②ノミアレルギー性皮膚炎
・原因
ノミアレルギー性皮膚炎の原因は、ノミの咬傷です。ノミの唾液に含まれる成分に対するアレルギー反応なので、たとえノミの咬傷が1箇所だけであったとしても、強い痒みを引き起こす可能性があります。
ノミアレルギー性皮膚炎にかかった犬は、腹部、背中、後ろ足、尻尾などを噛み、ホットスポットのような二次的な局所性皮膚感染症を発症する可能性も高いです。
ノミアレルギー性皮膚炎の犬の体表には、ノミの成虫やノミの糞がみられることがあります。たとえ、寄生しているノミの数自体はあまり多くない場合でも、犬には強い痒みがもたらされているケースが多いです。
・症状
ノミアレルギー性皮膚炎を発症すると、激しい痒みから、犬は体を掻きむしったり、頻繁に体表を噛んだりする仕草を行います。そして、痒みを感じる患部に掻き傷ができたり、皮膚のただれがみられたり、ノミやノミの糞が体表に付着していたりします。
・診断
獣医師は、ノミアレルギー性皮膚炎の典型的な症状である掻き傷、皮膚のただれ、ノミやノミの糞の有無を調べます。また、重度の痒みをもたらすその他の寄生虫や皮膚疾患の可能性も確認したうえで診断します。
・治療方法
ノミアレルギー性皮膚炎では、原因となるノミを駆除することが重要となります。犬の居住空間に発生するノミを駆除するためにこまめに室内の掃除をするほか、犬にノミ・マダニ対策に有効な「ブラベクト®錠」を処方するなどし、ノミに寄生されない生活環境づくりを行います。
③食物アレルギー
・原因
犬の食物アレルギーは、主に、牛肉、鶏肉、卵、大豆などのたんぱく質や小麦、米などの穀物をアレルゲンとします。免疫が、特定の食物成分を異物として認識してしまうことで発症します。
・症状
犬の食物アレルギーでよくみられる症状は、身体を頻繁に掻いたり、舐めたり、噛んだりする動作です。その他、外耳炎や、下痢などの消化器系疾患を併発することもあります。
・診断
食物アレルギーの診断方法としては、8〜12週間以上、新奇たんぱく質のフードを与えたり、除去食試験をしたりして、アレルゲンとなる食物を調べる方法があります。詳しくは、動物病院の獣医師の指示に従ってください。
・治療方法
このように、アレルゲンとなる食物を特定し、それ以外の食物を与えるようにすることで、症状の改善を見込むことができます。その他、獣医師から抗ヒスタミン剤や、ステロイド剤の処方を受けるケースもあります。
犬のアレルギー症状がみられたら、早めに動物病院で獣医師の診察を
今回は、犬のアレルギー症状に関する知っておきたい基礎知識や、アレルギーの種類別の原因・症状・診察・治療方法などを詳しくお伝えしてまいりました。
動物病院では、犬のアレルギーを治療する方法を診察によって知ることができるほか、ノミ・マダニ対策など、その他の犬の健康に関わる治療も並行して行うことができます。
犬にアレルギー症状がみられた場合には、早めに動物病院で獣医師から診察を受け、早期治療を行うことを心がけてください。
監修者情報
MSDアニマルヘルス株式会社 コンパニオンアニマル事業部 テクニカルサービス
獣医師 釜田 尚彦
東京大学農学部獣医学科卒
運営者情報
- MSDアニマルヘルス株式会社
- 住所:東京都千代田区九段北一丁目13番12号 北の丸スクエア
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