犬猫に噛まれると発症する危険性のあるパスツレラ症とは?症状・特徴・治療法・予防法などを解説

 

 

犬猫は家族と同様に大切な存在ですが、突然の感情の起伏や、持って生まれた性格などによって、噛まれたり、引っかかれたりしてしまうことは起こり得ます。そのとき、気をつけたいのが感染症の症状です。今回は、犬猫を飼っている方にはぜひとも気をつけていただきたい、パスツレラ症について、症状・特徴・治療法・予防法などを詳しく解説してまいります。

 

 

 

パスツレラ症とは

 

 

パスツレラ症(pasteurellosis)とは、動物や人間に共通する感染症のひとつとして、近年、日本での患者発生数が増えている病気です。特に、犬や猫から感染する、注意すべき感染症のひとつであるとされています。

 

 

 

パスツレラ症の特徴

 

 

パスツレラ症は、パスツレラ菌による感染症です。犬や猫はパスツレラ菌の宿主となることが多く、犬猫はほとんど発症することはありません。稀に猫がパスツレラ菌を原因とする肺炎を発症する可能性がある程度です。

 

また、犬や猫から噛まれたり、引っかかれたりすることにより、人間がパスツレラ菌をもらってパスツレラ症を発症することがあります。噛まれたり、引っかかれたりすることがなくとも、飛沫感染するケースもみられます。

 

気管支拡張症・HIV・悪性腫瘍・糖尿病など、免疫機能が低下している患者の方々は、特に注意が必要となります。

 

 

 

パスツレラ症の症状について

 

 

 

 

犬や猫に噛まれたり、引っかかれたりすることでパスツレラ菌に感染し、パスツレラ症を発症した場合、数時間程度で受傷した部位が赤く腫れ上がり、発熱や痛みが出てくるほか、リンパ節が腫れることもあります。

 

これを「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」と呼び、皮膚組織の中で炎症が広がり、受傷部位が関節付近である場合は関節炎を起こすリスクがあるほか、骨まで到達するような深い傷では骨髄炎にまでつながるケースもみられます。

 

パスツレラ症は、これまでは皮膚化膿症が主な症状であると認識されていたものの、最近では、呼吸器系疾患・外耳炎・骨髄炎・髄膜炎・敗血症などの重篤な症状に発展する可能性もあることがわかり、場合によっては死亡例も確認されているため、十分に注意が必要な感染症となっています。

 

 

 

パスツレラ症の原因とは

 

 

パスツレラ症の原因はパスツレラ菌ですが、犬は約75%、猫は約100%という大変高い確率で常在菌として保有している菌となっています。パスツレラ菌にはいくつかの種類がありますが、人間がパスツレラ菌を発症する原因となるのはパスツレラ-ムルトシダ(Pasteurella multocida )と呼ばれる種類が多いです。

 

なお、人間のパスツレラ症の約60%を占めるのが呼吸器系の症状です。症状は、軽症の風邪のようなものから、重篤な肺炎まで、人によって様々な症状がみられます。気管支拡張症・悪性腫瘍・結核などの症状をお持ちの方は、特に発症しやすい傾向があるため、注意してください。

 

その他、人間のパスツレラ症の約30%を占めるのが皮膚にみられる症状です。犬猫に噛まれたり、引っかかれたりした後、数時間〜2日程度で受傷部が腫れ上がり、激痛・発赤・蜂窩織炎などを発症し、糖尿病などの基礎疾患をお持ちの方は骨髄炎・敗血症などにまで発展し、最悪の場合は死亡するケースもあります。

 

 

 

パスツレラ症の診断・検査方法

 

 

パスツレラ症の診断については、パスツレラ菌の分離判定を、受傷部位から出る膿汁から行うことによって診断することができます。こちらの診断・検査は、通常の臨床検査機関で受けることができるため、症状が疑われる場合には、必ず、医師による診断・検査を受けましょう。

 

その他、犬猫に噛まれたり、引っかかれたりした接触歴により、皮膚科関係の症状がパスツレラ症であると診断されることも稀にあります。もしも、皮膚科関係の症状がみられた場合に、直近で犬猫の行動によって傷を受けたことが思い当たる際には、医師に必ず事実を伝えるようにしてください。

 

 

 

パスツレラ症の治療法

 

 

 

 

パスツレラ症の治療法については、早めの治療が早期回復につながるため、なるべく早い段階で診断・検査を受けたうえで、適切な抗生物質の投与を受ける必要があります。

 

パスツレラ症で使用される抗生物質としては、クロラムフェニコール、セファロスポリン系、ペニシリン系、テトラサイクリン系などが挙げられます。これらは、パスツレラ症の回復に効果が期待できる抗生物質の代表的な例です。

 

猫は約100%という高い確率でパスツレラ菌を持っており、高い合併症の発症率もあるため、犬猫に噛まれたなどの接触歴がある場合は、たとえ症状が見られない場合でも、抗生物質の投与が予防的処置として必要となることがあります。

 

また、受傷した直後は、犬猫に噛まれたり、引っかかれたりした部位を、石鹸などを用いて入念に洗い、消毒を行うと良いでしょう。受傷部位に腫れ・痛みなどがみられる場合には、パスツレラ症をすでに発症している可能性が考えられるため、医療機関で適切な診断・検査を受けるようにしてください。

 

 

 

パスツレラ症の予防法

 

 

・犬猫に噛まれたり、引っかかれたりしないように注意する

 

パスツレラ症の感染経路でよくあるのが、犬猫に噛まれたり、引っかかれたりすることで、パスツレラ菌をもらってしまうというものです。そのため、犬猫と接するときには、攻撃を受けないように注意する必要があるほか、爪切りなども日頃から入念に行い、受傷するリスクを抑えることが予防となります。

 

 

・犬猫のしつけをしっかりと行い、口移し行動は避ける

 

犬猫のしつけを怠ると、噛んだり、引っかいたりする行動が癖付いてしまう可能性があります。そのため、しつけはしっかりと行うようにしましょう。また、犬猫の口からもパスツレラ菌は感染する危険性があるため、犬猫とキスをしたり、口移しで食物を与えたりする行動は避けるようにしてください。万が一、犬猫の唾液が口に付着するようなことがある場合には、うがいを行い、手洗いも欠かさないようにしましょう。

 

 

・不用意に野良猫や野良犬に手を出さない

 

野良猫や野良犬は、衛生的な環境にいないこともあり、パスツレラ菌をもらうリスクや、攻撃を受ける危険性も増します。そのため、道端で野良猫や野良犬に出会ったとしても、不用意に手を出さないように注意してください。

 

 

・糖尿病、肝障害、免疫不全などの疾患がある場合は特に注意

 

糖尿病、肝障害、免疫不全などの疾患がある場合には、パスツレラ症を発症すると重篤な症状につながることがあるため、十分に注意が必要でしょう。その他、免疫力が普段よりも落ちているときも感染率はアップするので、生活習慣の改善や免疫力の維持も、予防には大切な要素です。

 

 

 

パスツレラ症の感染リスクを減らすためにも、犬猫の爪の手入れやしつけを怠らず、問題があれば獣医師に相談を

 

 

今回は、犬猫を飼っている方にはぜひとも気をつけていただきたい、パスツレラ症について、症状・特徴・治療法・予防法などを詳しく解説してまいりました。

 

動物病院では、パスツレラ症の感染リスクを減らすための予防方法などを教えてもらえるほか、健康診断や、寄生虫(ノミ・マダニ)の対策・予防なども実施してもらうことができ、総合的な健康管理を行うことが可能です。

 

万が一、犬猫を飼っている方が、噛まれたり、引っかかれたりして、パスツレラ症のような症状がみられた場合には、早めの段階で、医療機関での適切な診断・検査を受けるようにしてください。

監修者情報

MSDアニマルヘルス株式会社 コンパニオンアニマル事業部 テクニカルサービス
獣医師 釜田 尚彦
東京大学農学部獣医学科卒

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