2020年10月6日
猫はなぜ「またたび」に興奮するのか?気になる効果や与え方の注意点とは
「猫にまたたび」という古い言葉が存在するほど、猫が好きな植物=またたびといったイメージは定着しているのではないでしょうか。猫は、またたびを食べたり、匂いを嗅いだりすることで、お酒に酔っ払ったような楽しげな仕草を見せることがあります。
このように、またたびは猫の嗜好品として知られていますが、与え方を間違えると健康被害が出る可能性もあるため、注意が必要です。今回は、またたびが猫を興奮させる理由や、含有する成分、正しい与え方のポイントなどを詳しくお伝えしていきます。
猫が興奮する「またたび」とは?
目次
・またたびとは
またたびは、マタタビ科マタタビ属の植物であり、日本各地の山や林などに自生している樹木です。
またたびには、虫えい果と呼ばれる実がなり、これが猫の好物とされています。虫えい果とは、通常のまたたびの実に、ハエやアブラムシなどの昆虫が卵を産みつけ、形が変形したものです。通常の実は、楕円形のつるつるとした表面となっていますが、虫えい果は凹凸のある表面をしているのが特徴となっています。
・またたびの成分
またたびには、マタタビラクトンやアクチニジンなどの成分が含まれており、これらがヤコブソン器官と呼ばれる、猫の上顎にある器官を通ることで、猫が酩酊するような効果が得られるとされています。
またたびを与えると、猫が興奮して転げ回ったり、走り回ったりするため、これらの成分に依存性があるのではないかと心配される飼い主の方々もいますが、効果は一時的なものであり、依存性はないと考えられています。
・猫がまたたびに興奮する理由
猫がまたたびに興奮する理由は、マタタビラクトンやアクチニジンなどの成分の効果により、脳の中枢神経が刺激され、一時的に軽い麻痺状態の症状が出るためと言われています。またたびを猫に与えると、効果が弱い場合は数秒ほど、効果が強い場合は数分以上、陶酔したような状態が続きます。
「またたび」の持つ効果とは
・猫のストレスを解消する
またたびは、猫のストレスを解消する効果を持っています。またたびを与えると、猫は一定時間、活発に動き回るようになるため、運動不足の解消にも効果が期待できます。
・猫の食欲を促進する
食欲不振の猫に、またたびを混ぜた餌や水を与えると、食欲を促進する効果を得られる場合があります。ただし、食欲不振の場合は、そもそも何らかの体調不良や病気などを発症している可能性もあるため、なるべく早めに動物病院で獣医師の相談を受けるようにしてください。
・猫の老化を防ぐ
またたびの枝などを猫に与えたり、またたびを含んだおもちゃで遊ばせたりすると、かじる回数が増えるため、それによって脳が刺激を受け、老化防止につながると言われています。
「またたび」の正しい与え方
・またたびは2種類の与え方がある
またたびは、匂いを嗅がせる方法と、直接食べさせる方法の2種類の与え方があります。匂いを嗅がせる方法は、刺激は弱いものの、効果が長続きするため、おもちゃに仕込んで与えるのが良いでしょう。
直接食べさせる方法は、刺激が強いものの、効果は短めです。これは、またたびの成分に反応するヤコブソン器官に与える刺激が、飲み込んでしまうことで途切れてしまうため、効果は薄くなります。
・幼少期の頃は与えないほうが良い
またたびは、幼少期の猫にはあまり与えないほうが良いとされています。幼少期の猫は、体内の器官が未発達であるため、刺激が強すぎてパニック状態になる恐れがあるのです。市販されているまたたびを含有した商品は、対象年齢が記されているものがあるため、そちらの情報を確認したうえで与えるようにしましょう。
・年老いた猫や疾患のある猫には無理に与えない
年老いた猫や、疾患(特に心臓の関連)がある猫にまたたびを与えると、身体に過度の負担をかけてしまう場合があるため、無理に与えないように注意してください。
・与える量は少し嗅がせる程度から始める
またたびを猫に初めて与える場合は、効果の個体差があるため、少し嗅がせる程度で様子をみながら慣れさせていくのが良いでしょう。そのうえで、無理のない適量を判断するようにしてください。
・与える頻度はご褒美程度にする
猫にまたたびを与える頻度は、1回与えたら間をあけて、ご褒美程度にするのが良いでしょう。毎日のように与えていると、またたびに慣れてしまい、効果が出にくくなる場合があります。
「またたび」の注意点や危険性
・与えすぎると中枢神経の麻痺などの危険性がある
またたびを猫に与えすぎると、中枢神経に刺激が過度に伝わり、異常麻痺などの症状を引き起こす危険性があります。ひどい場合には呼吸困難に陥ることもありますので、与えすぎには十分に注意が必要となります。
・またたびの保管場所には十分に気をつける
猫は鼻がきくため、またたびの保管場所が猫の手の届きやすい場所だった場合、飼い主が留守の間に過剰摂取をしてしまう可能性があります。そのため、万が一の事故が起こらないようにするためにも、猫が自分では絶対に取り出せない場所(戸棚の中や、箱の中など)に保管するようにしてください。
・またたびは強度によって適量が変わる
またたびは、粉末→液体、実→枝の順番で強度が高いとされており、強度によって、猫に与えるべき適量も異なってきます。そのため、事前にまたたびの強度を確認して与える量を調整する必要があります。不明な場合には、動物病院で獣医師に相談するなどして、適切な量を把握しましょう。
「またたび」以外に扱いに気をつけるべき植物
・ユリ科の植物
ユリ科の植物には、ユリ・チューリップ・すずらんなどが挙げられますが、これらは花・葉・花粉を猫が少しだけ摂取しただけでも危険な症状を発症するリスクがあります。最悪の場合は、急性腎不全を引き起こして命の危険性もあるため、猫のいる家庭にこれらの花を置くことは避けるようにしてください。
・サクラソウ科の植物
サクラソウ科の植物にはシクラメンなどが挙げられます。シクラメンを猫が摂取してしまうと、下痢・嘔吐などの中毒症状を起こす危険性があり、大量摂取をしてしまうと死に至る場合もあるため、注意が必要です。
・ポインセチア
ポインセチアを猫が摂取すると、葉・茎などに含まれる成分の作用で、下痢・嘔吐・皮膚炎などの症状が発症する可能性があります。ポインセチアの場合は、命にかかわる症状が出ることは少ないとされていますが、猫が接触しないように注意すべきです。
猫が「またたび」の過剰摂取などで様子がおかしい時は、動物病院で獣医師の診断を
今回は、またたびが猫を興奮させる理由や、含有する成分、正しい与え方のポイントなどを詳しくご紹介してまいりました。
またたび以外にも注意すべき植物もご紹介してきましたが、これらの植物を摂取したり、またたびを過剰摂取してしまったりした場合には、動物病院で速やかに獣医師の診断を受けるようにし、万が一の事故にならないように細心の注意をしてください。
また、動物病院では、またたびに関する相談もできる他、健康診断を受けることができたり、寄生虫(ネコノミ・マダニ)の予防などを行ってもらうことができたりするため、定期的に通院を心がけると良いでしょう。
監修者情報
MSDアニマルヘルス株式会社 コンパニオンアニマル事業部 テクニカルサービス
獣医師 釜田 尚彦
東京大学農学部獣医学科卒
運営者情報
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